キタ圏エボラ出血熱感染予防事業の視察

平成27年9月17日

2015年8月13日、松原昭在マリ日本大使及びフラン・エキザ国連児童基金(unicef)マリ事務所代表を始めとする視察団が、カイ州キタ圏キタ地区を訪問しました。今年度から日本の支援でunicefが実施している、エボラ出血熱の流行拡大を抑止する事業を視察するためです。キタは、バマコから約180Km西、ギニアとの国境近くに位置する人口約6万人の地区で、unicefがこの事業を展開しているマリ国内地方5地区の内の一つです。視察団は、キタ地区内ダルサラム保健センター及びグループ中学校Aにて、本事業で実施されている活動を視察しました。


まず、視察団は、キタ地区の入り口で地区代表団に迎えられました。地区の入り口には簡易検疫所のようなものが設けてあり、そこで手をアルコール消毒し、赤外線体温計で各人の体温を測り、体調を確認します。その後、視察団は代表団と共に移動し、まずはダルサラム保健センターを訪問しました。


同保健センターでは、unicef が地元の劇団キタ・クル(Kita Kourou)と協力して作成した、エボラ出血熱予防の啓発劇を観劇しました。劇にはある一家が登場し、次男がエボラ出血熱に感染するという物語を通じて、野生肉は安易に食さないこと、食事の前には手を石けんで洗うこと、発熱や嘔吐といった症状が出たらエボラ出血熱を疑うこと等のメッセージが織り込まれていました。手洗いのデモンストレーションも詳細な説明つきで実施され、効果的な啓発活動が行われていることが確認できました。キタ・クルは、8月までにギニアとの国境近辺の集落を50カ所近く巡回しこの啓発劇を上演、地域住民への啓発を行ったとのことです。


次に訪問したグループ中学校Aは、全生徒数803名のマンモス校です。ここでは、unicefを通じ、エボラ出血熱に関する研修を受けた教員のモデル授業を見学しました。授業では、担当教員が、エボラ出血熱の感染経路、症状、対処法、予防方法等について、テンポ良く生徒に質問を投げかけていきます。それに対し、生徒が挙手をして答えていきます。説明には、unicefが作成した教材が使用され、視覚的にもわかりやすい啓発授業ができるよう、工夫されていました。


最後にキタ圏庁事務所を訪問し、視察団と代表団が意見交換を行いました。キタ圏長は、日本の支援と、unicefの働きに感謝と敬意を述べました。また、エキザunicefマリ代表は、日本の支援は非常に重要であることを強調し、今後もキタ関係者と共に効果的なプロジェクトを実施していく意欲を表しました。これらを受け松原大使は、日本の支援が効果的且つ有効に使われていることに対する喜びを表明すると共に、関係者の協力に感謝を伝えました。

エボラ出血熱は、2014年西アフリカで感染が拡大し、マリでは2014年10月に感染者第1号が確認され、その後8名が発症6名が死亡しました。しかし、マリ政府及び関係機関の迅速な対応により、2015年1月に収束宣言が出され、現在まで新たな発症例はありません。


写真  
キタの入り口にて体温測定と手の消毒 ダルサラム保健センター
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
キタの入り口にて体温測定と手の消毒 ダルサラム保健センター
   
視察団の到着を太鼓の演奏で出迎える 啓発劇の観劇中
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
視察団の到着を太鼓の演奏で出迎える 啓発劇の観劇中
   
啓発劇(野生動物を仕留めたところ) 啓発劇(野生肉を食べる次男(中央)とその家族)
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
啓発劇(野生動物を仕留めたところ) 啓発劇(野生肉を食べる次男(中央)とその家族)
   
啓発劇(病気になる次男(左)) 手洗いのデモンストレーション
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
啓発劇(病気になる次男(左)) 手洗いのデモンストレーション
   
キタグループ中学校Aを訪問する視察団 エボラ啓発のモデル授業を見学
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
キタグループ中学校Aを訪問する視察団 エボラ啓発のモデル授業を見学
   
教材を使用しながら授業を行う教員 質問に答えようと挙手する生徒たち
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
教材を使用しながら授業を行う教員 質問に答えようと挙手する生徒たち
   
キタ圏長事務所での意見交換 左から、キタ圏長、松原大使、エキザunicefマリ代表
©UNICEF Mali/2015/Dicko ©UNICEF Mali/2015/Dicko
キタ圏長事務所での意見交換 左から、キタ圏長、松原大使、エキザunicefマリ代表