マリの女性の服装
現在、マリ女性の多くは、全ての民族(ソニンケ、カソンケ、タマシェク、ソンライ、セヌフォ、バンバラ、ミニャンカ、ドゴン、プル、アラブなど)において、マリやアフリカ一般の伝統的な服、例えば、パーニュコバ、バザン、ボゴラン、ガーナのパーニュアクワバ、ダンペ、ブルキナファソのファソデンファニ等を身につけています。
まずはマリで良く着られている生地を見てみましょう。
最も一般的になのは、ワックス(写真(1)、(3))と呼ばれる生地です。綿製で鮮やかな色と様々なモチーフのプリントが特徴で、ヨーロッパで製造されており、主な製造地はオランダです。オランダ製の布地は質が良いことで、別格とされています。アフリカの製造地はマリの他に、例えばガーナやコートジボワール、ニジェールなど、綿花を生産している国々が多いです。また、アジアの国でも製造されています。
次に、バザン(写真(2))は、純白の綿100%の生地に地模様が織り込まれた、光沢があるパリッと固めの生地です。西アフリカで、女性・男性ともに1ランク上の豪華な伝統的衣装を作る時に用いられます。バザンの製造工場はアフリカにはなく、主にドイツから輸入され、その後、国内において手作業で染色されます。絞り染めなども行われ、円形や四角形などさまざまなモチーフが染め抜かれます。
マリでは市場や商店で上記の様な色とりどりの様々な種類の布が売られています。それらを大体3パーニュ単位(1パーニュ=1m80cm位)で購入し、仕立屋に持ち込んで好みのスタイルの服に仕上げます。仕立屋では、係の人がきちんと採寸し、参考写真を見たりしながら自分の希望のスタイル、襟の開き具合や袖の長さ、着丈等を伝えます。また、刺繍やリボンテープなど、服の装飾についても注文できます。刺繍であれば、糸の太さや色を何種類使ってどのようなデザインに仕上げるのか、お店の人と相談しながら決めていきます。仕上がるまで、おおよそ1~2週間かかります。
マリはどちらかと言うと保守的な国なので、服装に関しても保守的なスタイルを保っていると言えます。例えば、既婚女性は一般的にグランブーブーと呼ばれる、体の線が出ないロングチュニックのような全身を覆う服を着て、その下にパーニュと呼ばれる腰巻きを、頭にはスカーフを巻きます。対して未婚女性は、体の線がきれいに出る、襟ぐりの広いウエスト丈の上着に、パーニュやロングスカートをはきます。袖口や裾にはフリルがあしらわれるなど、可愛らしいデザインのものが多く見られます。基本的に若い女性の服装に関してはあまり決まりはなく、みっともなくない格好をすれば良いとされています。
マリの服飾習慣の一つは、頭にスカーフを巻くことです。頭にスカーフを巻くことは、伝統的に、過酷な天候から髪の毛を守り、また、神の加護を感じるためとも言われています。イスラム教徒が大半を占めるこの国で、お祈りの時に女性は頭にスカーフを巻いたり被ったりするので、スカーフに宗教的な意味合いが込められているのでしょう。さらに、スカーフは巻き方によって、その人の魅力を表す方法の一つでもあるのです。これは伝統的には既婚女性の義務ですが、近年、義務の度合いは緩やかになっています。
様々なスタイルが登場しているにも関わらず、伝統的なパーニュはずっと変わることなく多くの女性に身につけられています。一般的に、伝統的なパーニュは幅1メートル長さ約1.8メートルの1枚布で出来ています。着方は、パーニュを両手で広げて真ん中辺りを腰に合わせ、両端を体の前に持って行き、体躯に巻き付けます。布の端を折り込んで固定するだけ、とても簡単です。日常からお祝い事まで、パーニュはマリ女性の服装において、非常に重要な位置を占めています。
マリには、多種多様なパーニュが存在しており、マリのほぼ全ての民族において様々なバリエーションを見ることができます。例えば、バンバラ族ではワックスやそこから派生した布、さらにバザンなどを総称してコバと呼びます。また、短めでかわいらしいスカートのようなペネルーというスタイル、裾が広がったマーメイドスタイルもあります。
近代化とともに、服装にまつわる習慣は少しずつ変化しています。特にバマコなど大きな都市に住む女性は、西洋とマリの服を日替わりで着ている人もいます。地方では未だ少ないパンツスタイルの女性も、都市部では目にすることがあります。ですが、お祝い事やその他の行事の際は、やはり伝統的な服に身を包みますし、皆さんそれを楽しんでいるのです。
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(1)ワックス生地で作られたマリの服 |
(2)バザン生地で作られたマリの服 |
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(3)ワックス生地で作られたワンピースとシャツ |
(4)パンツスタイルの女性 |
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(5)ワーキングスタイルの女性 |